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現代萌え文化思考

『お帰りなさいませ』の原点
2006年10月15日(
 今やメイドカフェのお約束のセリフとなった「お帰りなさいませ、ご主人様」「行ってらっしゃいませ、ご主人様」というあいさつは、実は秋葉原が発祥の地ではない。

 メイドカフェの元祖である秋葉原の「キュアメイドカフェ」では、今でもそうしたあいさつをしていない。キュアメイドカフェでは、普通に「いらっしゃいませ」というお出迎えの言葉なのだ。

それでは、どこが「お帰りなさいませ」というセリフを初めて使うようになったのかと言えば、実は名古屋の「M's Melody」という店なのだ。M's Melodyは、名古屋駅からだと地下鉄を乗り継いで15分ほど、上前津の駅の8番出口を出てすぐ。名古屋市中区の大須という場所にある。GOODWILL本店エンターテイメントデジタルモールの地下1階がM's Melody だ。

 M's Melodyの開店は2002年9月だから、ちょうど丸4年になる。メイドカフェの草創期に、名古屋の地ですでにメイドカフェが開店していたことは興味深い。全国レベルでみても3番目に早い開店なのだそうだ。この長い歴史を経ても人気は一向に衰えず、いまでも20組から30組の入店待ちの行列ができるという。営業時間は金・土・日・祝日の11:00〜19:30のみだ。お客の男女比は6対4で男性の方がやや多い。

 そのM's Melodyが9月3日に改装のため一時閉店し、9月8日に新装オープンした。新装した店内は、緑と白を基調としていて清潔で明るい。それでいてアンティークの家具やオルゴールも置かれていて、レトロ感も醸し出している。入り口のレジの横にはメイドさんの制服が展示してある。この点は大阪のメイドカフェと共通している。

 メイドさんの制服は黒のロングドレスに小さめのエプロンとリボンが印象的だが、ドレスの形にはバリエーションがあって、スカート丈も長短があるそうだ。また、リボンも赤と緑の2色ある。制服の種類によって、カフェ内でのメイドさんの地位が分かる店もあるが、ここでは判別することはできない。メイドさんが自分の好きな衣装を選んでいるからだ。

 そのことにも象徴されているが、M's Melodyではメイドさんにかなり権限が委譲されていて、彼女たちの創意工夫があちこちに表れている。例えば、オリジナルグッズにもアイデアは生かされているそうだ。店内のショーケースでは、マウスパッド、トートバッグ、タオル、マグカップなどのオリジナル商品が販売されているが、とりわけ目をひくのがメイドさんのCDだ。今年デビューした3人のユニットで、ユニット名は店の名前と同じM's Melody、そして曲は「Maid's Melody」だ。今年夏のイベントでは、この曲で大いに盛り上がったそうだ。

 M's Melody全体の印象は、どこまでも正統的なメイドカフェだということだ。むしろ、M's Melodyがメイドカフェのスタンダードを作ったと言ってもよいのかもしれない。

 M's Melodyが「お帰りなさいませ」というセリフを使うようになった経緯を取材時に聞いたのだが、開店当時のスタッフがすでに一人も残っていないため、正確な事情は分からないということだった。ただ、改装前からお屋敷を意識した内装を行っていたので、よりリアルな形でご主人様とメイドさんという関係を演出したかったことが、セリフに結びついたのではないか、ということだった。


ショーケースではオリジナル商品が販売されている
 この「お帰りなさいませ」というセリフは瞬く間に、秋葉原を初めとする全国のメイドカフェに広がっていった。それは化学調味料のようなものだった。それを入れるだけでおいしくなる。つまり「お帰りなさいませ」というセリフをメイドさんに言わせるだけで、メイドカフェとして成立してしまう。だから、メイドカフェをビジネスとして考える経営者たちが飛びついたのだ。そんな事情を知ってか、現在でも、本格的メイドカフェの店主やメイドカフェ・ファンのオタクのなかには、このセリフに反発する人も多いのだ。